今日はリンについてのお話です。
リンが足りないのではないか、また、多すぎて腎臓が悪くなったどうしよう、
と心配な飼い主さんから質問をいただいていますので、
Q&Aという形でご紹介していきますね。
その前に、リンはミネラルの仲間ですが、そもそもミネラルは
どんな特徴があり、どんな生理作用をするのか、おさらいしておきましょう。
栄養素として不可欠なものは、必須ミネラル16種類です。
その中で
比較的多く必要なミネラルを『主要ミネラル』
多く摂りすぎると毒性があるミネラルを『微量ミネラル』と呼びます。
ミネラルのおもな働きは、
1.骨、歯など体の構成成分になる
2.体液に溶けてpH・浸透圧を調整する
3.酵素の構成成分になる
4.神経・筋肉の興奮性の調整をする
などがあります。
体内での元素の構成要素は、酸素、炭素、水素、窒素の4元素が約95%を占め、
残り約5%にあたるそれ以外の元素を栄養学ではミネラルと呼んでいます。
その中でも、リンは、カルシウムに次いで多く存在する主要ミネラルになります。。
また、リンは、加工食品の添加物に使われるため、
あまり良いイメージを持っていない方も多いかもしれませんね。
でも、実は、「あなたなしでは生きられない〜」
というくらい生命維持活動に欠かせない栄養素で、
骨、歯、筋肉、脳、神経、肝臓などすべての細胞に分布しています。
では、ちょっと難しいのですが、一緒にQ&Aを見ていきましょう。
Q.リンという栄養素にはどんな働きがあるのですか?
1.カルシウムやマグネシウムと結合して、丈夫で健康な骨や歯を作ります。
2.DNAやRNAなどの核酸(細胞の中心にある核)や細胞膜を
構成する成分にもなっています。
3.ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを蓄える物質の成分となります。
糖質、脂質タンパク質の代謝を促し、体を動かしたり体温を維持したりしています。
細胞が生命活動を営むうえで、エネルギーを作る時には、
このATPからリンがビュンと切り離されて(音はでませんよ/笑)
ADP(アデノシン二リン酸)という物質に変化することによって生まれます。
こんな現象が、体の細胞内で一秒間に何回も起きてエネルギーを作りだしています。
栄養以前に、そもそもこのエネルギーを作り出す力がないと生きていけないということになります。
4.体液中のリン酸塩は、pH値を一定に保ち、浸透圧の調整を行ったり、神経の伝達をサポートしています。
Q.どんな食品に多く含まれていますか?
煮干し、桜エビ、削りカツオ、卵、大豆、高野豆腐、のり、昆布、牛乳、
ヨーグルトなどに多く含まれています。
この他にも広く植物性、動物性食材に含まれています。
Q.リンが少なすぎると、どのような問題が発生しますか?
骨や歯が弱くなったり、筋力が低下したりします。
ただし、リンは色々な食材に含まれますので、普通の食事で不足するということは、
あまり考えられないといわれています。
Q.リンを取りすぎると、どのような問題が発生しますか?
骨が弱くなったり、腎機能の低下をもたらします。
リンが過剰になると、カルシウムの吸収が阻害されるためです。
通常の食事をしていれば過剰になることはまずありませんが、
加工食品には添加物としてリンが多く使われているため、
過剰になりやすい傾向があるといわれています。
Q.リンとカルシウムはどのような関係ですか?
リンとカルシウムは、血液中でバランスを保って存在しています。
リンの摂り過ぎによって血液中のリン濃度が上昇すると、
血液中のバランスが崩れ、骨から血液中にカルシウムが溶けだし、
骨のカルシウム量が減少してしまいます。
AAFCOの基準では、カルシウム1〜2に対して、リン1のバランスで摂取するのが
効果的といわれています。
Q. ペットたちが口にする加工食品に添加されるリンはどのように表示されていますか?
ピロリン酸鉄
リン酸塩
ピロリン酸ナトリウム
などと表示されています。
また、pH調整剤と表示されるものの中にリン酸塩が含まれることも多いようです。
買い物の際に、こんなところをちょっと気にして
見てみるのもいいかもしれませんね。
さて、過剰症やカルシウムとのバランスなどについて触れたことで、
何か不安を感じた方はいらっしゃいませんか?
リンを多く含む食材を見ると、
同時にカルシウムを多く含む食材でもありますね。
また、
●リンの含有量が多く、カルシウムが少ない食材
●リンの含有量が少なく、カルシウムが多い食材
などありますので、色々な食材を使うことで、自然とバランスがとれてきます。
また、体内では、ホメオスタシス(恒常性)によって
必要なものは常に一定に保たれるという働きがありますので、
長期に渡ってリンが食事から摂れないという状況がない限り
不足することはありません。
加工食品であるドライフードは、同じものを食べ続けるので、
ひとつでも欠ける栄養素があると、
その栄養素は長期に渡って摂取できないことになりますが、
手作り食では、使う食材が日によって変わりますから、
ドライフードのように摂取量がいつも一定でなくても心配することはありません。
もちろん、水分たっぷりの食事をすることで、
過剰なミネラルも体の外に排出することができますね。
(文章:上級指導士 上住裕子)