「サンマが出るとアンマが引っ込む」
「秋のさんまは滋養にすぐれ、按摩さんの出番を奪うほどに身体に良いお魚だ」
という意味です。
秋になると誰でも一度は食べるでしょう。
江戸時代から
「狭真魚(さまな)」
「祭魚(さいら)」
などの名で、大衆魚として親しまれてきたさんま。
関西では今でもサイラと呼んでいるところもありますが、
「さんま」という名前の由来はというと…
むかしむかし、ご飯のおかずを
「ナ」と言っていました。
しかし、野菜も魚も同じ「ナ」だから不便である。
そこで魚のおかずは「真ナ(まな)」と呼ぶことにした。
さらに細長かったので「狭摩魚(さまな)」
と呼ばれた…。
この狭真魚(さまな)と呼ばれていたものが訛り、
「さんま」になったという説が有力です。
「秋刀魚」という字も。
昔の書物には「三摩」と記されていて、
夏目漱石の「我輩は猫である」の中では
「三馬」と書かれていますが、一般的に1898年頃に
現在の「秋刀魚」という字が使われる様になったそうです。
大衆魚だけに諸説さまざまというところでしょうか・・・
さて。
さんまは北海道東沖や三陸沖で獲れたものがおいしいとされますが、
ご存知でしたか?
わたしは産地を気にして買ったことはほとんどありませんでした。
「お!」
「さんま!」
「安い!」
これだけですね。
秋になると産卵のために本州を南下していくさんまは
10月下旬には脂質含有量が20%に達し、いわゆる秋の味覚、
『最高に脂の乗ったさんま』になります。
本来は、福島県から千葉県の銚子沖に達する
10月下旬から11月が最も脂の乗った旬なのです。
しかし、
実際の水揚げ高を見ると、
北海道で全国の半分以上が漁獲されています。
早く獲りすぎなのでは?という感じもしますが、
北海道にはブランド化されたさんまもあるほどなので、
味は確かなんでしょう。
でも『一番の旬のさんま』を食べるなら、
10月から11月に売られる、
三陸沖産のさんまがよいみたいですね。
このように
さんまが大衆魚として安く食べられるようになったのは
『棒受網漁』という漁法のおかげです。
現在では全国の97%が棒受網で漁獲されています。
これは、さんまが夜間光に集まる習性を利用したものですが
産卵直前のさんまは光に集まらないので、
店頭で卵を持ったさんまを見かける機会はほとんど無いそうです。
また棒受網で漁獲される時に、
さんま同士が激しくこすれあうためにさんまのウロコは取れてしまい、
あのようなツルツルした肌になってしまっているそうです。
ご存知でしたか?
(わたしは知りませんでしたー)
取れたウロコは、
やはりこすれあっている時にさんまの口に入るらしく、
消化管にはウロコが結構詰まっているそうです。
さんまのはらわたをきれいに食べきる人も多いと思います。
はらわたを食べる人はウロコにご注意!
本来、魚の内臓はかなり臭みがあり、食べにくいのですが、
さんまは餌を食べてから排出するまでの時間が30分程度と短いため
内臓にえぐみが無く、食べやすくなっているのです。
しかしそれでも、少し苦味がありますよね。
新鮮なサンマの肝は、
トロっとして甘みがありおいしいそうです。
しかし、獲ってから氷蔵で半日も経つと苦味が出はじめ、
24時間で完全な苦い肝の味になってしまうそうです。
この苦味がいいという人もいるでしょう。
でも、さんまは網ではなく、
一匹ずつ釣り上げたものをすぐに食べるのが、
最高の贅沢なのだそうです。
【甘いさんまの肝】
一度は食べてみたいですよね。
食品図鑑 『さんま』
◆旬
秋 9~11月
◆主な栄養成分
●必須アミノ酸をバランスよく含んだ良質のタンパク質
●貧血防止に効果のある鉄分・ビタミンB12
●粘膜を丈夫にするビタミンA
●骨や歯の健康に欠かせないカルシウムとその吸収を助けるビタミンD
●DHA・EPAはもちろんたっぷり
◆選び方
●頭から背中にかけて盛り上がり、厚みのある方が脂が乗っています。
●魚は内臓から悪くなるので、お腹が硬い方が新鮮です。
●黒目の周りが濁っていなく、透明で澄んでいるもの。
●尻尾を持った時、刀の様に一直線に立つサンマは新鮮です。
●口と尾が黄色いものは脂が乗っておいしいと言われていますが、
尾のほうが信頼性が高いです。
◆調理のポイント
●塩焼きは あらかじめ網を熱して、サラダ油かお酢などを塗っておくと、
皮がこびりつきにくくなり、きれいに焼けます。
火加減は強火の遠火。一気に焼き上げてください。
七輪が最高ですね。犬猫には骨を除いて、身をほぐしてあげてください。
●身と小骨をたたき、味噌と生姜で味付けをしてつみれにしてもよいでしょう。
●筒切りにして圧力鍋で煮れば、骨まで柔らかく食べられます。
●酒、醤油、ミリンを同割あわせた中に叩いたわたを入れ、
3枚におろしたサンマを30分くらい漬け込み、付け焼きにすれば、
普通の塩焼きとは違った風味が楽しめます。
●8月下旬から9月にはしりとして店頭に並ぶサンマは脂の乗りが今ひとつ。
なので、そのまま焼くと身がボソボソしておいしくありません。
刺身で食べるか、煮物のほうがおいしく食べられます。
◆保存方法
●鮮度が命!
買ってきたらすぐに調理をしましょう。
内臓をきれいに処理して冷凍すれば、煮物や揚げ物などに使えます。
干物にして冷凍すれば、なお日持ちします。
●内臓を取り出し、塩をすりこみヌカをまぶして冷凍保存すると
いい味わいをかもし出します。
●頭と内臓を取り、塩をふり、ザルにあげて冷蔵庫で1時間ほどしめます。
水分を拭き取り、厚めのクッキングペーパーで一匹ずつ包み、
さらに新聞紙でくるんで冷蔵庫で一晩置きます。
ラップに包みなおし、冷凍庫に入れれば一夜干しとして約1ヵ月保存できます。
主に焼き物向けです。
●3枚におろし、脱水シートに包み、冷蔵庫に2~3時間入れ、
水分が抜けてから使用します。冷蔵庫で3~4日保存できます。
主にマリネなど生食用です。
●脱水シートがない場合は3枚におろし、
バットに並べ塩をたっぷりと振りかけ、冷蔵庫に一晩入れます。
出てきた水分をしっかりと拭き、お酢やオリーブオイルに浸します。
冷蔵庫で3~4日保存できます。主にマリネなど生食用です。
(文章:上級指導士 青柳伸介)