鶏肉と言えば、唐揚げ、焼き鳥、親子丼、ローストチキンなどなど・・・日頃の家庭料理から季節のイベント料理やパーティーなど、今や日本の食には欠かせません。
もちろん、世界中でも幅広く親しまれている食材です。
例えば、お隣の国、韓国のサムゲタンも国の風土や歴史とともにつくられてきた代表的な鶏肉料理です。
さらに、豚肉や牛肉と異なり、食のタブーに触れること(宗教的禁止事項など)が少ないため、サウジアラビアなどの中東地域では、日本の3倍〜4倍も食べられているそうです。
また、鶏のタンパク質は肉の繊維が細くて柔らかいため、消化吸収が良いと言われており、古くから滋養源としても食されてきました。
鶏が家畜化された歴史は古く、今から五千年前頃、インドで飼育されていた記録が残っており、赤色野鶏が先祖と言われています。赤色野鶏は、現在も東南アジアに広く分布しています。
古代では、食用というより主に鳴き声により朝の到来、「時を告げる鳥」として飼育されていたことも多かったようです。「コケコッコー!」は、今で言う目覚ましの変わりだったのですね。
また、宗教的な儀式に用いられる他、雄鶏の縄張りを守る本能を利用した闘鶏も行われていました。
日本には、弥生時代に中国から朝鮮半島経由で伝えられ、奈良時代から一部で飼育が始まったとされています。
養鶏が産業的に起きたのは平安時代で、
鶏1000羽を飼育し、後に4500羽に増えて、付近の稲田を荒らしたという記述もあるそうですが、一般的に食べられるようになったのは、明治以降と言われています。外国からの種鶏と技術の輸入が始まり、様々な品種の改良が行われました。当時は、鶏一羽が大卒初任給の一週間分に相当するほど高価だったとか。
そんなご馳走だった鶏肉も、昭和40年頃になると、アメリカからブロイラー用のヒナ鶏が輸入され、それに伴って生産量が増加。今ではアメリカ発祥のブロイラー産業が日本に定着して、日本人の食をしっかりと支えています。
つまり、こうしてリーズナブルな価格で鶏肉が食べられるようになった理由の一つとして、ブロイラー産業のおかげと言えるのかもしれません。
近年、日本国内で流通している鶏肉は、ブロイラー、銘柄鶏、地鶏の3つに分けられています。
「ブロイラー」
通称「若鶏」と呼ばれ、短期間(生後7〜8週間)で出荷する肉用に改良されたもので、市場に出回る約9割という高い需要があります。大規模な鶏舎で過密な状態で育成されます。
「銘柄鶏」
日本在来種の鶏や外来種の鶏、どちらの血統であっても50%以下のもので、通常のブロイラー飼育法とは異なる工夫(飼育方法、飼料の内容、出荷日数など)が加えられており、日本全国で様々な銘柄鶏がブランドとして登録されています。
「地鶏」
日本在来種の鶏の血統が50%以上のもので、飼育期間80日以上、28日齢以降は一定期間放し飼いにするなどの細かい規格基準が設定されています。
「比内地鶏・名古屋コーチン・薩摩地鶏」は日本三大地鶏と言われています。これらは、純血地鶏が片親であることを前提に別種を掛け合わせた「雑種」になります。
戦時に多くの鶏種が減少する中、絶滅を阻止するため、「天然記念物」に指定された純血な地鶏は食べることができないそうです。
食品図鑑 『鶏肉』
◆旬
通年
◆主な栄養成分
たんぱく質
メチオニンなどの必須アミノ酸が含まれ、肝臓の機能を活性化する働きがあります。
抗体疲労効果のあるアンセリン(2種類のアミノ酸が結合したペプチドβーアラニン・メチルヒスチジン)という成分が多く含まれています。
脂質
コレステロールや動脈硬化のリスクが低いとされている不飽和脂肪酸のリノール酸やオレイン酸が多く含まれています。
ビタミンA
皮膚や粘膜の保護、視覚機能に働いています。
レバーは豚や牛と比べると約5倍!
ビタミンB群
ナイアシンが豊富で体内のエネルギー生成を助ける働きがあります。
◆選び方
厚みがあって、ツヤがあり、締まっているものを選びます。
皮つきの場合は、皮全体にちりめん状のシワが多く入っていて、毛穴がブツブツと盛り上がっているものを選びます。
肉汁が出ているようなものは避けましょう。
◆調理のポイント
唐揚げやソテーなど単一の料理だけでなく、色々な野菜と組み合わせて使うと、料理の風味やコクを引き出してくれます。
また、一羽から取れる様々な部位の特徴を活かした調理法があります。
モモ肉
脂肪が多く、コクのある味わい。
焼き物、煮物、揚げ物などに。
ムネ肉、ササミ
脂肪が少なく、タンパク質含有量が多い。
ササミは中央に筋があるので、取り除いて使いましょう。蒸して、サラダや和え物などに。
手羽
手羽先、手羽中、手羽元に分けられ、肉の部分は多くはありませんが、ゼラチン質と脂肪が豊富。
煮込み料理や揚げ物などに。
レバー、ハツ、砂肝
焼き物、炒め物、煮物などに。
鶏ガラ
ラーメンのダシなどに使われます。
その他にも、せせり(首の肉)、ヤゲンナンコツ(胸骨の先端部)、ぼんじり(尾の付け根部分)、
希少部位と言われている、ハラミ(横隔膜の肉)、さえずり(気管)、あずき(脾臓)、せぎも(腎臓)、ちょうちん(卵巣や卵管)などがあります。
鶏肉の特徴は、皮の部分に脂肪が集中しているため、皮を取り除くとカロリーが抑えられます。
骨付き肉は、圧力鍋などでじっくり煮込むことで、骨のエキスも加わり美味しいスープが出来ます。
ワンちゃん、ネコちゃんの水分補給にもオススメです。
冷蔵庫で冷やすとゼリー状になります。
また、ブロイラーと地鶏では、両者の飼育環境によって運動量に差があり、肉質に違いが見られます。それぞれの良い面を活かして調理してもよいでしょう。
・水分量(ブロイラーのほうが、1割増)
・弾力性(地鶏のほうが2、5倍強)
ブロイラー
肉質が柔らかく、味が染み込みやすい。煮込み料理や香辛料やタレなどに漬け込んで唐揚げや照り焼きに。
地鶏
風味やコクを活かした、水炊きなど。
*刺身やタタキのように生で食されることがありますが、食中毒を起こす事例も報告されています。一般に販売されているものは加熱して食べることが前提となっています。
また、ワンちゃん、ネコちゃんに食べさせる場合は、わざわざ味付けする必要はありません。
◆保存方法
ラップでピタッと包み、密閉容器に入れて冷蔵庫ヘ。牛肉や豚肉より傷みやすいため、早めに使いましょう。
量があるときは、茹でてから汁ごと、また、下味を付けてから保存容器に入れて冷凍しましょう。