最初に大前提を確認したいのですが、
ペット食育協会では「非加熱食材でも、加熱食材でも、フードなどの加工食品でも、
健康に生活できるなら選択肢を狭める必要はない」
というスタンスです。
ですから、
「フードで無ければならない」
「手作り食で無ければならない」
「生食でなければならない」
というストイックなスタンスの方々からすると
「緩い」
という印象をもたれるようですが、
問題解決力を高める秘訣は選択肢を豊富にもつことであり、
選択肢を狭めることは解決できる問題が少なくなることを意味しますから、
ペット食育協会では出来るだけ多くの方々と
共感できるようなスタンスを取っております。
しかし、
「手作り食は栄養バランスが取れないから病気になって早死にする」
という主張をよく見かけますので、
「それは間違いです!」
という主張をさせていただきます。
と申しますのも、
いたずらに飼い主さんの不安を煽っている方が少なくなく、
心配している飼い主さんが多く、
これは解決すべき課題だと考えたからです。
●ヒトとイヌ、ネコは違う生き物?
「手作りご飯有害説」を唱える方々の解説に
「ヒトとイヌ、ネコは違う生き物です!」
という意見がございますが、それはおっしゃる通りです。
ヒトとイヌやネコが同じ生き物だったらビックリします!
ですから、そこは同意見です。
●ヒトとイヌ、ネコは必要な栄養素が全く違う?
この部分が多分誤解を与える表現なのですが、
「ヒトとイヌ、ネコは必要な栄養素が全く違う」のは、
「完全に同じではない」という意味であり、
「必要な栄養素が一切かぶることも無い」という意味ではありません。
どうも、こういう印象を抱いている方が多い様です。
ヒトも、イヌもネコも、
タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルが必須であり、
糖質を細胞のエネルギー源に出来るという基本的な部分は「同じ」です。
ただ、ネコは完全肉食動物ですから、
動物性食材から摂取できる成分をワザワザ作る必要はないということで、
ビタミンB12やタウリンが必要だったり、
イヌはキシリトールを摂取するとインスリン放出量が他の動物と異なる!
という
「特殊な例」はございますが、
それは普通の食生活で対応出来る話です。
●栄養バランスが崩壊する←だから何?
これも、誤解を招くような表現なのですが、
どうも「車のガソリンタンクにコーラを入れて走らせようとする様な話」
にとらえている方が少なく無さそうです。
車なら壊れますが、
「身体には素晴らしい調整能力がある」ので、
不足分は貯蔵成分で対応しようとしてくれます。
「栄養バランスが崩壊する」
という脅し文句についてですが、
例えば、ワカメうどんやかけうどん(素うどん)は、
その方々言う栄養バランスが崩壊した食事ということです。
ですから、それを昼食に食べたら、
夕食まで栄養素が不足して病気になってしまう話になりますが、
実際にはそんなことには通常なれません。
もしその様に主張される方がいらっしゃったら
「栄養素の欠乏症実験に関する学術論文」をお読みいただけたら、
「あっ!こんなに長期間大丈夫なんだ…。」
とご理解いただけると思います。
●摂取する食餌の栄養バランスが崩れていても、身体には素晴らしい調整能力がある
身体には、「短期的な過剰、欠乏」には
キチンと対応出来る「素晴らしい調整能力」が備わっています。
この存在を知らないと、
ちょっとでも栄養バランスが崩れたら
具合悪くなってしまうと誤解するのは仕方ないことです。
「栄養バランスが崩壊して病気になったり早死にする」
と主張される方々の意見を拝読すると、
どうも「身体には素晴らしい調整能力がある」ことをお忘れになっているか?
ご存じないか?という雰囲気を感じ取ります。
と申しますのも、先の欠乏症実験では、
単独の栄養素を含まないフードを食べさせて(通常あり得ない)、
2~9週間後にようやく症状が出て、
しかも栄養素を補給したら元に戻るということで、
なかなか病気になれないことがわかっているからです。
そう、仮に欠乏症になったとしても、元に戻せるのです!
取り返しのつくことを、
取り返しのつかないようなことが起こるかのように表現するのは、
いかがなものかと思うわけです。
●手作り食は変化するから大丈夫!
もちろん、ヒトでも「そばアレルギー」や
「甲殻類アレルギー」など、危険なケースはあります。
しかし、だからといって、
「人類はそばを食べてはいけない」とはなりません。
個々のケースに合わせて判断すればいいのです。
そういう極端な体調のケースを除いて、
手作り食がなぜ栄養バランス的に大丈夫かというと、
日々内容が変わるからです。
人間でも同じものを毎日食べたりしません。
それに合わせて手作り食をしていれば、
通常は大丈夫です。
個人的な経験ですと、
朝・昼・晩の三食カレーライスを三ヶ月間続けたことがありますが、
ベースはカレーでも、いろいろつけ合わせを変えれば、
摂取する栄養素は変わってきます。
別にこの三ヶ月間で大きく体調を崩したりもしませんでしたから、
身体の調整能力はやはり素晴らしいんだと思います。
●フードは栄養バランスが大事!
しかし、フードの場合は栄養バランスが大事です!
なぜなら、「一度作った」からには、
死ぬまで食べてもらいたいものです。
だとしたら、死ぬまでの間ずっと食べたとして、
欠乏症や過剰症にならない必要があります。
この様な理由から、
フードには栄養バランスの計算が必要なのです。
一度つくったら内容を変えにくいフードに
栄養バランス計算が必要なのはわかりますが、
それを手作り食に当てはめようとするから難しくなるのです。
それならいっそのこと、
「手作り食で病気にするにはどんな食事を食べさせたらいいのか?」
と考えてみるのもいいですよね。
そうしなければいいのですから…。
●手作り食で病気にさせるには?
これは、極端な食事をさせるに限ります!
「キャベツとササミだけ食べてればいいんですよね?」
という極端な方は、ペットを栄養失調に出来るでしょう。
そういう特殊な方はキチンと学んでいただければいいのであり、
そういう極端な方と、
経験上栄養バランスが複数回の食事で取れる方を一緒にするから、
「難しい…」「怖い…」という印象を与えてしまうのだと思います。
もしあなたが、
手作り食に不安を感じているなら、
それは間違った情報や、
極端なケースを最初に知ったからだと思います。
別に手作り食でなければならないとは申しませんが、
「手作り食は危険だ!」
というご意見は適切な理解をした方の意見ではないと感じます。
●手作り食は危険ではありません!
手作り食はハードルが低くて奥が深いものです。
手作り食は栄養バランスが崩れてペットを病気にしたりしませんし、
それがもし不安なのでしたら、
ぜひ、ペット食育協会(APNA)の各種講座で学んで、
自信を持って下さい。
重要なので繰り返しますが、
問題解決力を高める秘訣は採りうる選択肢を増やすことです。
選択肢を増やすためには、
どんな道具・アプローチも使えますという状態が重要であり、
「●●でなければダメ!」「●●はダメ!」
という選択肢を狭めるスタンスは、
好ましいことではありません。
選択肢を増やすためにも、
ぜひ、飼い主さんには適切な情報を学んでいただきたいと思います。